琥珀色の誘惑 ―王国編―

(14)シンデレラの戸惑い

「ま、まじ? 本当にわたしがこういうのを着るの?」

「はい。ミシュアル様がお選びになられました」


晩餐会の衣装などは、夫または婚約者が選び届けるのが愛の証だという。

とはいえ、その晩餐会に男は同席出来ない。

例外が、後宮における主人唯ひとり……今夜の場合は国王陛下だが、とても晩餐会に出られるほど回復しているわけではない。舞と謁見するために、わざわざ着替えて起きて来て頂いたのである。


(だったら、こっちから枕元まで行ったのに)
 

と思うが、そう簡単にいかないのが王族というものらしい。

一時期は本当に危なかったという。だが今は容態も落ち着いているので心配しないように、とヌール妃からお言葉があった。
 

“最愛の妻”って言葉に浮かれ、“晩餐会”の言葉を聞き逃すなんて、間抜けにも程がある。

そう――今夜は舞を女性王族に紹介するための“晩餐会”なのだ。

もちろん、舞にそんな経験は皆無。日本でもテレビの特集でしか見たことがない。豪華なシャンデリアの下、白いテーブルクロスの上に、たくさんのフォークとナイフが並んでいるイメージだ。外国だとイブニングドレスを着て舞踏会でダンスをしている映像もあった気がする。


(もう……なんで、テーブルマナーとか社交ダンスを習わせてくれなかったのよ、お父さん!)


目の前に出されたシャンパンゴールドのイブニングドレスを見つめ、舞は心の中で叫んだ。

艶のある生地はおそらくシルク。ワンショルダーで、肩から胸に掛けて流れるようなスパンコールが煌いている。まるでダイヤモンドみたい、と舞が言おうとした時……。


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