琥珀色の誘惑 ―王国編―
ヌール妃の後宮内にある離宮が、舞に与えられた部屋である。
離宮には部屋が五つあり、中央にある二十畳くらいの円形の部屋が主賓の間だ。そして、東西に護衛の女官が入り、南北にお付きの女官が入る。シャムスは南の部屋が割り当てられた。
どうやら離宮を与えられるのは、最上級の扱い――正賓らしい。
何と言っても国王のお声掛かりである。舞は正式に王太子の婚約者として認められた。
「ライラって、本当にアルのことが好きなのね」
晩餐会のことを思い出し、舞がポツリと呟く。
「それは……どうでしょうか。私のような者にはわかりかねますが……」
舞の髪を梳くのを手伝いながら、シャムスは自分の知っている範囲内でハルビー家の経緯を話してくれた。