琥珀色の誘惑 ―王国編―
ハルビー家は名門だ。しかし、王族に繋がる血を持ちながら、なんと正妃を輩出したことが一度もなかった。

ライラの父、マッダーフは庶出だという。だが、男子は母の身分に関係なく、野心と実力があれば出世は可能だ。

彼は王女を娶ることで、王族の中心に近づき、実力をつけて来た。やがて彼はハルビー家でトップに立ち、更に上を目指したのである。

そしてそのためには、何としても正妻であるサマン王女との間にたくさんの子供を必要としたのだが……。


十五歳で妻に迎えたサマン王女は中々懐妊せず、外国から不妊治療の専門医を招き、ようやく生まれたのがライラだった。

結婚から実に十六年後のことである。


マッダーフは生まれたばかりのライラを、マフムード前王太子の婚約者に差し出した。

前王太子は当時十歳。隣国の六歳の王女との間に正式な婚約が整ったばかり。だが、マッダーフはライラを第二夫人に推薦した。

その後、前王太子が二十歳の時、隣国の闇組織より性奴隷を購入したという噂が流れ……。

真相は解明されないまま、王女とは破談になった。

マッダーフはそれに乗じ、ライラを第一夫人に推し進める。

しかし、アサド前国王はライラの母サマン王女の不妊を引き合いに出し、政敵の娘を第一夫人候補に選ぶ。マフムード前王太子の事故死はその直後に起こった。


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