琥珀色の誘惑 ―王国編―

(16)悪女と呼ばないで

舞は何かの香りで目を覚ました。

ごく最近、嗅いだことのある匂い……それがジャスミンであることを思い出し、舞は嬉しくなる。日本のアロマテラピーにも使われている濃厚でセクシーな香り。

クアルン最初の夜、舞を後ろから抱き締めたミシュアル王子と同じ匂いだ。


(これって……夢よね。でも、あの夜を思い出すなんて、わたしが欲求不満みたいじゃないっ!)


大きなベッドの中央に丸まり、舞は口の中でブツブツと呟いた。次第に、深い眠りの渦に飲み込まれて行き……。


いや、何かおかしい。


掛け布の上から舞の身体の丸みに沿って、何かが這い上がってくる。


(これも……夢?)


その時、身体が傾いた。ベッドに不均衡な重量が掛かったからで……。


ハッとして舞は目を見開いた。

すると、顔から十センチも離れていない距離に、見たこともない男の顔があった!

舞が悲鳴を上げようとした瞬間、男の大きな手が彼女の口を塞ぐ。


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