弟矢 ―四神剣伝説―
『人質は我々にもよく見えるように、外に囚われてるでしょう。括られていれば厄介だが、幼子も一緒であれば、ただ一カ所に固められている可能性が高いと思われます』

『奴らが殺戮に走る可能性はないのでしょうか?』


正三が凪に尋ねた。

手当たりしだいにやられては、とても手の打ちようがない。


『心配には及びません。蚩尤軍の目的は弓月どのと乙矢……いや、一矢どの。そして『青龍二の剣』です。獲物を放り出し、餌を追うものはおりますまい。問題は『鬼』ですが……こればかりは』


凪は静かに頭を振った。

そして、乙矢に『青龍二の剣』に似せた剣を持たせる。


『ホントにこんなんで騙せるのか?』

『全ては乙矢どのの演技力しだい』

『俺は役者じゃねえ。抜いてみろって言われたらどうすんだ!?』

『無論、抜いてそれらしく二~三人叩き斬って下さい。この間のように……』

『あ、あれは、勢いっていうか。もう一回、同じことができるかどうかわかんないぜ』


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