弟矢 ―四神剣伝説―
たったひとりで殺されに行く度胸はあるくせに、殺せと言われたら途端に腰が引ける乙矢が、新蔵には全く理解できない。
『やれ! 間違っても弓月様の後ろに隠れたりするんじゃないぞ!』
『新蔵。あまり乙矢殿に負担を強いてはいけません。一矢殿と偽って、巻き込んだのは我々なのだから』
『弓月様、この男は爾志家の嫡子ですよ。巻き込まれて当然というか、むしろ当事者でしょう! 弓月様が責任を感じる必要などございません』
新蔵は乙矢に向き直ると噛み付くように言った。
『いいか! お前は弓月様にとって義理の弟になるかも知れない、と言うだけだ! その分を忘れるな!』
どうやら、釘を刺したつもりらしい。
『うるせえ奴だな。俺や一矢を追っ払っても、お前が後釜に座れるとは限らないんだぜ』
『な、な、な……!』
図星を差されたせいか、吃ったまま次の言葉が出て来ない。乙矢もついつい、
『そっちこそ、師範代の分を越えて、妙な考えを起こすんじゃねえぞ』
などとからかってしまう。新蔵は憤死しそうなほど真っ赤だ。
『やれ! 間違っても弓月様の後ろに隠れたりするんじゃないぞ!』
『新蔵。あまり乙矢殿に負担を強いてはいけません。一矢殿と偽って、巻き込んだのは我々なのだから』
『弓月様、この男は爾志家の嫡子ですよ。巻き込まれて当然というか、むしろ当事者でしょう! 弓月様が責任を感じる必要などございません』
新蔵は乙矢に向き直ると噛み付くように言った。
『いいか! お前は弓月様にとって義理の弟になるかも知れない、と言うだけだ! その分を忘れるな!』
どうやら、釘を刺したつもりらしい。
『うるせえ奴だな。俺や一矢を追っ払っても、お前が後釜に座れるとは限らないんだぜ』
『な、な、な……!』
図星を差されたせいか、吃ったまま次の言葉が出て来ない。乙矢もついつい、
『そっちこそ、師範代の分を越えて、妙な考えを起こすんじゃねえぞ』
などとからかってしまう。新蔵は憤死しそうなほど真っ赤だ。