弟矢 ―四神剣伝説―

二、一対の剣

「乙矢殿、怯んではいけませんよ。見破られては全てがおしまいです」


視線を武藤に合わせたまま、小さな声で弓月が囁く。


「わ、わかってる、けど、さ」


目に見えるだけで、蚩尤軍はざっと百人近くもいる。これでビビるなと言う方が無茶だろう。


乙矢が、記憶にある限りの情報を伝え、大よその見取り図から、凪は細かな作戦を立てた。

だが、凪が予想したより里人は少し多そうだ。その中には子供も――それも、赤ん坊まで含まれている。

彼らは、凪の予想どおり、広場に作られた高い囲いの中に、ひとまとめに収容されていた。



「武藤小五郎! 関所の高札に従い、参上致しました。なんの罪もない里人を、全員解き放ちなさい!」


凛とした表情で、武藤を睨みつけ、弓月は叫んだ。


「爾志一矢、貴様の手にあるのは、『青龍二の剣』か?」


一斉に、乙矢の手元に視線が集中する。百人以上の人間に見つめられ、乙矢は緊張のあまり今にも倒れそうだ。


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