弟矢 ―四神剣伝説―
ハッタリもここに極まれり――と言いたくなるような名口上だ。


そこまでやけに余裕のあった狩野だが、弓月のこの台詞を聞き、わずかだが、眉が引き攣った。


腹の据わった弓月とは対照的に、乙矢は……本気で怒って斬りかかってきたらどうすんだ!? と内心及び腰だ。

長瀬が呆れかえるほどの大根役者で、二枚目の勇者には程遠い。しかし、これまでの負け犬人生に比べれば、その場に立っているだけでも、大きな一歩といえよう。


しかし、この睨みあいを是と思わぬ者が、約一名。


武藤はこの時、憤然たる面持ちで、両者のやり取りを見ていた。

周到に計画したつもりであったのに、これでは、狩野に手柄を奪われてしまう。どうにかせねばと思った時、人質たちを閉じ込めた囲いの中央で異変が始まった。


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