弟矢 ―四神剣伝説―
たった今まで、まるで背中にあることを忘れていたほどなのに、ひとりの男の姿を見た途端、状況が一変する。
背中が焼けるように熱い。そして、どんどん重くなる。さらには、何かが語り掛けてくるようだ。
裂かれた半身を求めて、『二の剣』が前へ進めと命じる。そこに、己の半身がいる、そう正三に教えた。
「待って下さい、織田さん。行くって、いったい何処へ?」
「『一の剣』が呼んでおるのだ。――火を放った後は、すぐに森の中に身を隠せ。よいなっ」
「織田さん!」
弥太吉には訳がわからない。
何より優先せねばならない役目を放り出し、正三は里人が囚われている囲いに向かって駆けて行ってしまう。
しかも、『一の剣』が呼んでいると口走った。
すぐにも凪の元に駆け戻りたい。しかしここまで、弓月の役に立つどころか、足を引っ張る一方だ。
ここはなんとしても、この手で火を点けねばならない。
ひとまず正三のことを頭から振り払い、弥太吉は火種を絶やさぬよう、武器庫に忍んで行った。
背中が焼けるように熱い。そして、どんどん重くなる。さらには、何かが語り掛けてくるようだ。
裂かれた半身を求めて、『二の剣』が前へ進めと命じる。そこに、己の半身がいる、そう正三に教えた。
「待って下さい、織田さん。行くって、いったい何処へ?」
「『一の剣』が呼んでおるのだ。――火を放った後は、すぐに森の中に身を隠せ。よいなっ」
「織田さん!」
弥太吉には訳がわからない。
何より優先せねばならない役目を放り出し、正三は里人が囚われている囲いに向かって駆けて行ってしまう。
しかも、『一の剣』が呼んでいると口走った。
すぐにも凪の元に駆け戻りたい。しかしここまで、弓月の役に立つどころか、足を引っ張る一方だ。
ここはなんとしても、この手で火を点けねばならない。
ひとまず正三のことを頭から振り払い、弥太吉は火種を絶やさぬよう、武器庫に忍んで行った。