弟矢 ―四神剣伝説―
即答する二矢に横から新蔵が怒鳴りつけた。


「貴様は、父上や母上の仇討ちがしたくないのか? 神剣を守るのが宿命であろう!」

「俺は知らん。俺は……刀なんか持ったこともない。第一、四天王家ったって、宗主は皆殺しにされたって聞いたぜ。残党かき集めたって蚩尤軍を倒せるわけがないだろ? お前らおかしいんじゃねえのか?」

「なんだとぉ!」

「新蔵、止さぬかっ」


弓月は止める一方だ。

その時、横から最初に乙矢に斬りかかった熊のような男が口を開いた。


「遊馬家師範代、長瀬賢悟(ながせけんご)でござる。先ほどは失礼した。――だが乙矢殿、おぬしが拒んでも、体に流れる血を奴らは見逃すまい。腹を見せて降参しては、斬られるのは必定。よろしいのか?」


そんな長瀬の言葉に、乙矢はクッと笑った。


「強い人間にはわかんねえよ。弱かったら、腹を見せようが斬りかかろうが、どっちみち殺されるんだ。この血がなんだってんだ……好きで爾志に生まれて来たんじゃねえよ。親父も一門の連中もそうだった。あんたらも、蚩尤軍も皆一緒だ! 刀を取って戦わないと生きる価値もないのか? 強いってことはそんなに偉いのかよっ」


口元の血を拭いながら、乙矢は顔を歪めてそう叫ぶのだった。


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