弟矢 ―四神剣伝説―
丸腰で立つ乙矢に、『青龍一の剣』が振り下ろされる瞬間――轟音とともに、武器庫から火柱が天に抜けた。

さすがの『鬼』もそれには動きが止まる。

その隙に、乙矢は敵の間合いから逃げ出した。


(や、やり過ぎじゃねえのか?)


大量の火薬に引火したようで、火の勢いが衰えることはない。


「姫様、ご無事ですか!? 馬鹿野郎――乙矢っ!」   


立ち昇る炎と煙を唖然と見つめる乙矢に、駆けつけた正三が怒鳴りつける。そのまま、乙矢に突撃して来て、刀を抜き払った。


「伏せろっ!」


乙矢の真後ろから斬りかかる『鬼』を、正三は一閃した。その寸前に、乙矢は地面に倒れこんでいる。逃げ遅れた乙矢の髪が数本、正三の刃の犠牲になった。


「も、もっと、早く言えよ」

「確かに、刃から逃げる身のこなしは鋭いな」


正三は地面に這いつくばる乙矢に手を差し伸べ、どうにか余裕の笑みを作るが……。


「正三! 後ろだ!」


弓月の緊迫した声に、正三は振り返った。


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