弟矢 ―四神剣伝説―
真っ直ぐに自分に向かってくる『青龍二の剣』を避けることなく、弓月はそのまま目を閉じた。


(正三は私を斬らない。そう信じる)


だが、父は『鬼』と化し、我が子を斬った。答えはすでに決まっている。なのに、理性ではなく感情が、正三を信じろ、という。

いや、弓月自身が信じたかった。


刹那――ズサッと剣先が肉に突き刺さる、嫌な音が辺りに響いた。

弓月の鼻に血の匂いが広がり、目の前が真っ赤に染まる。だが、どうしてか痛みは感じなかった。


「グゥ……」


歯を食いしばり、苦痛に耐える声が聞こえる。

弓月の前に立ち塞がり、正三の剣を体で受け止めていたのは、乙矢だった。


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