弟矢 ―四神剣伝説―
その瞬間、濁りかけた瞳に色が戻り、大粒の涙が浮かび上がる。
正三の口が微かに開き、乙矢の名を呼んだ。
「おと……や、おれを……ころ……せ、たの……」
「断わる! 俺はお前を死なせない。戻って来いよ!」
正三の心は、文字通り命懸けで鬼と闘っていた。
だが、離れた位置にいる長瀬らは、それに気付くことができない。
「今だ、新蔵! 正三を斬れっ! 奴は鬼だ。もう……元には戻らぬ」
「そんな、俺に、織田さんを斬るような真似は」
「ならば、拙者が……」
ふらつく足で、長瀬は立ち上がり、刀を抜こうとする。
正三の口が微かに開き、乙矢の名を呼んだ。
「おと……や、おれを……ころ……せ、たの……」
「断わる! 俺はお前を死なせない。戻って来いよ!」
正三の心は、文字通り命懸けで鬼と闘っていた。
だが、離れた位置にいる長瀬らは、それに気付くことができない。
「今だ、新蔵! 正三を斬れっ! 奴は鬼だ。もう……元には戻らぬ」
「そんな、俺に、織田さんを斬るような真似は」
「ならば、拙者が……」
ふらつく足で、長瀬は立ち上がり、刀を抜こうとする。