弟矢 ―四神剣伝説―
同時に、一矢の内で鬼が騒ぎ出したのであろう。静かに目を閉じ、呼吸を整える。その動きは一旦止まった。
直後、弓月たちを取り囲んでいた敵兵が瞬く間に四散した。
その中央から『一の剣』を手にした『鬼』が姿を現す。
その男は、先ほど武藤に言われ、神剣が納まった白木の箱を抱えていた兵士であった。強引に持たされたのであろう、腹の辺りの着物が裂け、真っ赤に汚れている。それは、腹に深い傷があることを示していた。
「なんと……惨い真似を」
弓月はあらためて、蚩尤軍の遣り様に怒りを覚えた。
「――それが奴らだ」
荒い息が治まると、一矢はそう口にした。
『鬼』は真っ直ぐに、一矢、いや『二の剣』に向かって突進してくる。
目覚めたばかりの獣に相応しい咆哮は、惨劇の場と化した山里を再び震撼させた。
武器庫に上がった火柱は、すでに屋根の萱も、そして、そこを踏み荒らした弓兵も燃やし尽し、沈静へと向かっている。炭となった梁が『鬼』の雄叫びに崩れ落ちた。
直後、弓月たちを取り囲んでいた敵兵が瞬く間に四散した。
その中央から『一の剣』を手にした『鬼』が姿を現す。
その男は、先ほど武藤に言われ、神剣が納まった白木の箱を抱えていた兵士であった。強引に持たされたのであろう、腹の辺りの着物が裂け、真っ赤に汚れている。それは、腹に深い傷があることを示していた。
「なんと……惨い真似を」
弓月はあらためて、蚩尤軍の遣り様に怒りを覚えた。
「――それが奴らだ」
荒い息が治まると、一矢はそう口にした。
『鬼』は真っ直ぐに、一矢、いや『二の剣』に向かって突進してくる。
目覚めたばかりの獣に相応しい咆哮は、惨劇の場と化した山里を再び震撼させた。
武器庫に上がった火柱は、すでに屋根の萱も、そして、そこを踏み荒らした弓兵も燃やし尽し、沈静へと向かっている。炭となった梁が『鬼』の雄叫びに崩れ落ちた。