弟矢 ―四神剣伝説―
――ガヤガヤと大勢の話し声が聞こえた気がした。


ハッとして、身体を起こそうと身じろぎした時、左肩に激痛が走る。おゆきに右腕を刺された時の比ではない。体が燃えているようだ。


「痛っ――どう、なってんだ」


暗がりにジッとしてると、しだいに目が慣れてきた。

真上に藁葺きの天井がある。どこかの家屋の一室に思えた。星空が見えるよりはましだろう。宿場と違って、吹き込む風は木々の瑞々しさを含んでいる。その風が、火照った乙矢の体を冷やしてくれた。

自由になる右手で触れると、左肩の傷はしっかりと手当てがしてあった。

自分が無事だということは、弓月も無事に違いない。

しかし、『青龍二の剣』を肩から引き抜いた後は、記憶がはっきりしない。奴らは半数以上残っていたはずだ。あの状況で、どうやって助かったのだろう?

誰かに聞きたいが、近くには誰も居なかった。


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