弟矢 ―四神剣伝説―
「何を言うんだ! 弓月殿は俺がお前の弟だから、ずっと庇ってくれてただけだ。それだけだよ……」
「弓月殿もそうでしょうか?」
一矢の問いに弓月は答えを躊躇した。
そんな彼女の気配を察し、横から凪が答える。
「遊馬家当主の父上と後継たる兄上を亡くされ、弓月殿のお立場は変わられました。一門か四天王家から婿を迎え、遊馬家を継ぐことになられる可能性も。そうなれば、爾志家のご当主となられた一矢さまに嫁ぐのは、如何なものでしょう」
「なるほど……。確かにそうなれば、私より次男の乙矢が婿に入るのが筋であろうな」
そのまま引くかと思われた。
しかし、一矢の気性でそれはあり得ないことを、乙矢は知っている。
「ですが、残念ながら、私は弓月殿以外のおなごを娶る気はござらん。後継が必要なら、我らの子供にそれぞれの家を継がせることも可能であろう。――乙矢はどうだ?」
突如話を振られ、乙矢は慌てふためく。
「私と弓月殿を争うつもりか、と聞いている?」
「弓月殿もそうでしょうか?」
一矢の問いに弓月は答えを躊躇した。
そんな彼女の気配を察し、横から凪が答える。
「遊馬家当主の父上と後継たる兄上を亡くされ、弓月殿のお立場は変わられました。一門か四天王家から婿を迎え、遊馬家を継ぐことになられる可能性も。そうなれば、爾志家のご当主となられた一矢さまに嫁ぐのは、如何なものでしょう」
「なるほど……。確かにそうなれば、私より次男の乙矢が婿に入るのが筋であろうな」
そのまま引くかと思われた。
しかし、一矢の気性でそれはあり得ないことを、乙矢は知っている。
「ですが、残念ながら、私は弓月殿以外のおなごを娶る気はござらん。後継が必要なら、我らの子供にそれぞれの家を継がせることも可能であろう。――乙矢はどうだ?」
突如話を振られ、乙矢は慌てふためく。
「私と弓月殿を争うつもりか、と聞いている?」