弟矢 ―四神剣伝説―
萎えそうな心を奮い立たせ、弓月は言った。
「わかった。乱暴な真似をしてすまなかった。だが、一人で逃げるには限界がある。私と来るなら、そなたを守って差し上げるが……」
「姫、何を申されます! 戦力ならともかく、このような足手まといを」
長瀬が慌てて口を挟む。
「失礼なことを申すな。乙矢殿は本来であれば私の義理の弟。戦う術もなく逃げているというなら、お守りし、安全な里までお連れしたほうがよろしいだろう」
「ですが姫様……現実問題として、我々に人を守る余裕がありますかな?」
これまで後ろに控えてきた一段と背が高く美男子の男が口を挟む。
彼が織田正三郎、普段は正三(しょうざ)と呼ばれている。遊馬の分家筋にあたり、四天王家の血を受け継ぐ一人であった。貴公子然とした面差しが、弓月によく似ている。
「しかし……」
「俺のことを思うなら、さっさと宿場から出て行ってくれ! あんたらのことが連中に知られる前に。ったく、おとなしく東国に引っ込んでりゃいいのに、なんだってこんなとこまで来るんだよ」
「貴様っ! 弓月様のお心がわからんのかっ!」
乙矢の言葉全部が、新蔵の神経を逆撫でするらしい。
「……姫様」
「わかった。乱暴な真似をしてすまなかった。だが、一人で逃げるには限界がある。私と来るなら、そなたを守って差し上げるが……」
「姫、何を申されます! 戦力ならともかく、このような足手まといを」
長瀬が慌てて口を挟む。
「失礼なことを申すな。乙矢殿は本来であれば私の義理の弟。戦う術もなく逃げているというなら、お守りし、安全な里までお連れしたほうがよろしいだろう」
「ですが姫様……現実問題として、我々に人を守る余裕がありますかな?」
これまで後ろに控えてきた一段と背が高く美男子の男が口を挟む。
彼が織田正三郎、普段は正三(しょうざ)と呼ばれている。遊馬の分家筋にあたり、四天王家の血を受け継ぐ一人であった。貴公子然とした面差しが、弓月によく似ている。
「しかし……」
「俺のことを思うなら、さっさと宿場から出て行ってくれ! あんたらのことが連中に知られる前に。ったく、おとなしく東国に引っ込んでりゃいいのに、なんだってこんなとこまで来るんだよ」
「貴様っ! 弓月様のお心がわからんのかっ!」
乙矢の言葉全部が、新蔵の神経を逆撫でするらしい。
「……姫様」