弟矢 ―四神剣伝説―

五、消えた勇者と神剣

その夜――乙矢は黙って里を去った。


弓月は、知らず知らずのうちに乙矢を男に……剣士に変える言葉をくれる。

彼女のためなら、乙矢は剣を取り、人を斬ることができるのだ。それはやがて、一矢に弓引く可能性を示唆していた。

人生には戦わねばならぬ時がある、わかってはいたが……。


弓月らに背を向け森に一歩踏み出した時、「二番矢を外せば後はない」――その言葉が心の奥深くで警笛を鳴らし続けていた。


(一矢がいれば弓月が危機に陥ることなんてありえないよ)


 自分自身にそんな言い訳をして、乙矢は再び、逃げ出した。


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