弟矢 ―四神剣伝説―
だが、この少し前、凪は正三から昼間の出来事を聞かされる。
元々が激しい気性の一矢だ。乙矢と弓月の、肉体的ではないにせよ、精神的な裏切りを知ればただでは済まさないだろう。
だが、そういった事態に陥ることで、乙矢を縛る鎖を打ち壊す突破口になるのでは、と考えた。
ところが……。
それ以前に乙矢が姿を消したのでは、お話にならない。凪の思惑はまたもや外れてしまった。どうやら、乙矢という男は、時間を与えれば逃げる方向にしか思考が向かぬらしい。
後を追ったと言われる新蔵が乙矢を連れ戻し、合流を果たすまで時間を稼ぐ必要がある。
凪は自分が矢面に立つことに決め、弓月を下座に座らせたのだ。
「ほう、宗主と名乗られるなら、当然戦闘にも加わっていただくことになるが……よろしいのか?」
「お待ちください。それは私が」
凪は手で弓月を制した。
「承知致しました。おっしゃる通り、宗主の務めを果たしましょう」
いつもどおり、余裕の笑みで彼は切り返した。
元々が激しい気性の一矢だ。乙矢と弓月の、肉体的ではないにせよ、精神的な裏切りを知ればただでは済まさないだろう。
だが、そういった事態に陥ることで、乙矢を縛る鎖を打ち壊す突破口になるのでは、と考えた。
ところが……。
それ以前に乙矢が姿を消したのでは、お話にならない。凪の思惑はまたもや外れてしまった。どうやら、乙矢という男は、時間を与えれば逃げる方向にしか思考が向かぬらしい。
後を追ったと言われる新蔵が乙矢を連れ戻し、合流を果たすまで時間を稼ぐ必要がある。
凪は自分が矢面に立つことに決め、弓月を下座に座らせたのだ。
「ほう、宗主と名乗られるなら、当然戦闘にも加わっていただくことになるが……よろしいのか?」
「お待ちください。それは私が」
凪は手で弓月を制した。
「承知致しました。おっしゃる通り、宗主の務めを果たしましょう」
いつもどおり、余裕の笑みで彼は切り返した。