弟矢 ―四神剣伝説―
顔面蒼白になり、突如アタフタし始める。
「なんか知らんが……憑き物が落ちたって感じだな。で、俺のことはもう殺さないのか?」
「殺すも殺さんも刀を持たぬお前に里人は斬れん。第一『青龍』はどこにもない。きっと何かの間違いなんだ。あの少女が見間違ったんだろう。それを一矢様が、身内で始末をつけようと、あんな馬鹿げた命令を……。ああっ! 一矢様から渡された刀を崖下に落としてしまった。どうすれば」
新蔵は立て続けに、乙矢が気になる言葉を口にした。慌てて、確認しようとするが……。
「な、なあ、誰が何を見間違ったって言うんだ? それに、あの脇差。あれは一矢がお前に託したのか? それって」
その時、背後の森から聞こえていた規則正しい四十雀(しじゅうから)の鳴き声がピタッとやんだ。
清々しい朝の空気には不釣合いな複数の殺気に、乙矢と新蔵は瞬時に身を起こす。
乙矢は片膝を立てた状態で、慎重に辺りの気配を窺った。
「乙矢」
「わかってる」
短く言葉を交わした時、青葉を揺さぶり森を離れようとする野鳥の羽ばたきが聞こえた。
まるで、船倉から逃げ出す鼠のようだ。直後、二人の眼前に蚩尤軍の兵士二十名ほどが姿を現した。
「なんか知らんが……憑き物が落ちたって感じだな。で、俺のことはもう殺さないのか?」
「殺すも殺さんも刀を持たぬお前に里人は斬れん。第一『青龍』はどこにもない。きっと何かの間違いなんだ。あの少女が見間違ったんだろう。それを一矢様が、身内で始末をつけようと、あんな馬鹿げた命令を……。ああっ! 一矢様から渡された刀を崖下に落としてしまった。どうすれば」
新蔵は立て続けに、乙矢が気になる言葉を口にした。慌てて、確認しようとするが……。
「な、なあ、誰が何を見間違ったって言うんだ? それに、あの脇差。あれは一矢がお前に託したのか? それって」
その時、背後の森から聞こえていた規則正しい四十雀(しじゅうから)の鳴き声がピタッとやんだ。
清々しい朝の空気には不釣合いな複数の殺気に、乙矢と新蔵は瞬時に身を起こす。
乙矢は片膝を立てた状態で、慎重に辺りの気配を窺った。
「乙矢」
「わかってる」
短く言葉を交わした時、青葉を揺さぶり森を離れようとする野鳥の羽ばたきが聞こえた。
まるで、船倉から逃げ出す鼠のようだ。直後、二人の眼前に蚩尤軍の兵士二十名ほどが姿を現した。