弟矢 ―四神剣伝説―
「ちょっと待てっ! では貴様、俺をつけて参ったのか!」
窮地にも関わらず、思考が堂々巡りをし始めた乙矢を、新蔵の怒声が現実に引き戻す。乙矢はそれ以外にも思い出したことがあったが……。
敵は少しずつ、二人を取り囲みつつ動いている。
そんな中、新蔵は迂闊にも敵の誘いに乗り、歩を進めつつある。このままでは敵陣に引き摺り込まれては、四方から挟撃されてしまうだろう。
「気付かなんだのか? 遊馬の師範とやらは、間抜けでも務まるのだな」
とことん馬鹿にされ、怒りのあまり、口どころか耳から泡が吹き出しそうだ。血管が浮き出るほど刀を握り締めると、新蔵は敵将目掛けて、先制攻撃に出ようとした。
だがその瞬間、乙矢は慌てて新蔵の腕を掴み引っ張る。
「待てよ」
「止めるな! 悔しいが、奴らにつけられたのはこの俺だ。カタは俺がつける! 遊馬一門の名に掛けて!」
「偉そうに言ってるが……破門されたんだろ?」
「貴様ぁ、こんな時に気勢を削ぐようなことを言うな!!」
「落ち着けよ。長瀬のおっさんに、しょっちゅう言われてるだろ? 考えてから動けって。――なんか変だ。考えたくねぇけど」
「変って……そんなこと言ってる場合か?」
窮地にも関わらず、思考が堂々巡りをし始めた乙矢を、新蔵の怒声が現実に引き戻す。乙矢はそれ以外にも思い出したことがあったが……。
敵は少しずつ、二人を取り囲みつつ動いている。
そんな中、新蔵は迂闊にも敵の誘いに乗り、歩を進めつつある。このままでは敵陣に引き摺り込まれては、四方から挟撃されてしまうだろう。
「気付かなんだのか? 遊馬の師範とやらは、間抜けでも務まるのだな」
とことん馬鹿にされ、怒りのあまり、口どころか耳から泡が吹き出しそうだ。血管が浮き出るほど刀を握り締めると、新蔵は敵将目掛けて、先制攻撃に出ようとした。
だがその瞬間、乙矢は慌てて新蔵の腕を掴み引っ張る。
「待てよ」
「止めるな! 悔しいが、奴らにつけられたのはこの俺だ。カタは俺がつける! 遊馬一門の名に掛けて!」
「偉そうに言ってるが……破門されたんだろ?」
「貴様ぁ、こんな時に気勢を削ぐようなことを言うな!!」
「落ち着けよ。長瀬のおっさんに、しょっちゅう言われてるだろ? 考えてから動けって。――なんか変だ。考えたくねぇけど」
「変って……そんなこと言ってる場合か?」