弟矢 ―四神剣伝説―
そのまま、腰から鞘ごと長刀を引き抜くと、右手に持ち替え……なんと、乙矢の前に正座したのだ。
「ど、ど、どうした? なんなんだ?」
「俺はお前に、礼を言わなきゃならんことがある」
新蔵はそう言うと、両手を地面についた。
「さっきのことなら、おあいこだぜ。お前だって俺を助けて……」
「違うっ! 先ほどの件は、確かにお前を殺そうとしたのは申し訳ないと思う。だが、元はと言えば、お前が里から逃げ出したのが原因だ! 弓月様の気持ちを捉えながら、すぐにフラフラしおって!」
「礼がどうとか言ってなかったか? 正座してまで説教すんなよ」
直径四尺はありそうな太い幹にもたれかかり、呆れたように乙矢は言った。
「う……。いや、だから……。高円の里での件だ」
「は? あそこで、お前に礼を言われるようなことは」
「俺が、織田さんを斬ろうとしたのを止めただろう? 長瀬さんの言葉が間違ってるとは言わん。遊馬の剣士として死ねるなら、それは俺たちにとっては誇りだ。――お前にはわからんだろうが」
「ど、ど、どうした? なんなんだ?」
「俺はお前に、礼を言わなきゃならんことがある」
新蔵はそう言うと、両手を地面についた。
「さっきのことなら、おあいこだぜ。お前だって俺を助けて……」
「違うっ! 先ほどの件は、確かにお前を殺そうとしたのは申し訳ないと思う。だが、元はと言えば、お前が里から逃げ出したのが原因だ! 弓月様の気持ちを捉えながら、すぐにフラフラしおって!」
「礼がどうとか言ってなかったか? 正座してまで説教すんなよ」
直径四尺はありそうな太い幹にもたれかかり、呆れたように乙矢は言った。
「う……。いや、だから……。高円の里での件だ」
「は? あそこで、お前に礼を言われるようなことは」
「俺が、織田さんを斬ろうとしたのを止めただろう? 長瀬さんの言葉が間違ってるとは言わん。遊馬の剣士として死ねるなら、それは俺たちにとっては誇りだ。――お前にはわからんだろうが」