弟矢 ―四神剣伝説―
「多分、これは凪先生が張ったんだ」
「……俺らを里に着かせないためにか?」
「馬鹿者! 里人を守る為に決まっておろうが! 土中に埋める結界は、遊馬だけだからな」
「なるほど、敵が蚩尤軍であれ、他家の裏切り者であれ、侵入を阻める、と。どうせなら、お前が馬鹿ってとこも、少しは計算に入れて欲しかったもんだ」
「う、うるさい! 気付いたんだから、ごちゃごちゃ言うなっ!」
この結界が利いていたなら、大軍は里には着いてないはずだ。
「先生がこっちに結界を張ったということは、やはり美作の関所に向かわれたか。乙矢、これをこのままにして、我らは関所に向かおう。早く、弓月様に……どうした?」
札に触れぬまま、土を掛け元に戻そうとした新蔵の手を乙矢が止めた。
「お前、気付かんのか?」
短く言った乙矢の顔は、珍しく酷く真面目なものであった。
「何がだ?」
「――血の匂いだ」
森は静かであった。だが、微かに漂う鉄の匂いが乙矢の鼻孔をくすぐる。
「……俺らを里に着かせないためにか?」
「馬鹿者! 里人を守る為に決まっておろうが! 土中に埋める結界は、遊馬だけだからな」
「なるほど、敵が蚩尤軍であれ、他家の裏切り者であれ、侵入を阻める、と。どうせなら、お前が馬鹿ってとこも、少しは計算に入れて欲しかったもんだ」
「う、うるさい! 気付いたんだから、ごちゃごちゃ言うなっ!」
この結界が利いていたなら、大軍は里には着いてないはずだ。
「先生がこっちに結界を張ったということは、やはり美作の関所に向かわれたか。乙矢、これをこのままにして、我らは関所に向かおう。早く、弓月様に……どうした?」
札に触れぬまま、土を掛け元に戻そうとした新蔵の手を乙矢が止めた。
「お前、気付かんのか?」
短く言った乙矢の顔は、珍しく酷く真面目なものであった。
「何がだ?」
「――血の匂いだ」
森は静かであった。だが、微かに漂う鉄の匂いが乙矢の鼻孔をくすぐる。