弟矢 ―四神剣伝説―
八年前に体内に鳴り響いた警告音が、再び胸を突き上げた。


「里に入りたい。どうすればいい?」

「結界を……解けばいいんだ。方法はどの家も同じだろう? だが、敵も里に入れるようになる。お前の判断が間違っていれば、危険に晒すことに――おいっ」


新蔵の警告など無視して、乙矢はさっさと掘り返し、結界札を取り出した。そして、更に短く告げる。


「借りるぞ」


返事も待たず、乙矢は新蔵の腰から長刀を抜いた。

結界札をフッと空中に投げると、迷うことなく一刀両断にする。次の瞬間には、刀は新蔵の腰に戻っていた。


「お前なぁ、少しは考えてから」

「少しでも考えたら、逃げたくなる。嫌な予感がするんだ。頼む、信じてくれ」


新蔵は軽く髪をかき上げると、


「わかってる、男に二言はない。お前に助けを求めたのは俺だ。お前を信じるし……第一、結界を破った後で言うな!」

「……すまん」
 

霧が晴れたように脇道が目に入る。二人は迷うことなく、その道を進んだ。


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