弟矢 ―四神剣伝説―

三、結界

本来、結界とは神剣の力を封じるために、四天王家に伝わって来た技である。

今回の、凪のような使い方は特殊だ。


この手の技は向き不向きがある。凪はかなりの腕前で、見事な結界を作り上げる。勇者の血統を持ってしても、その視覚を欺かれるくらいに。

蚩尤軍であれば尚のこと、彼らは一歩森に踏み込んでから、正常な判断力を失いつつあった。


だが今回は、里に張った一矢の結界も影響を与えていた。

一矢の張った結界は、それぞれの心に眠らせた暗黒を増幅させ、敵を攻撃する。憎しみは増え、それに伴い周囲は敵だらけになる。これらはまるで、神剣の鬼が持つ負の連鎖であった。


しかも今は、正三が中心となる結界を破ったため、四方に張った結界の均衡が崩れてしまっている。


使い方はともかく、一矢が結界を操る力に優れていることは間違いないようだ。


神剣に選ばれた勇者は、鬼を制することができる。

その中に、鬼の力を利用する、などという伝説は、四天王家にも伝わってはいなかった。

 

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