弟矢 ―四神剣伝説―
立ち上がった『鬼』の姿を見て、兵士らは口々に言う。


『武藤様も卑怯な……我らを鬼の餌食にして、側近のみを連れてあの遊馬の男を追われるとは』

『遊馬、誰のことだよっ!?』

『神剣を手に鬼になりかけた男のことです。おきみと言う名の幼子と、その男を殺せ、との命令で。この、里跡に逃げ込んだ高円の里の連中も皆殺しに、と』


ここまで聞いた時に、乙矢は声を上げたのだ。



「しょう……織田さんがここにいるのか!? どこだ! どこにいる!?」


掴みかからんばかりになる新蔵を押さえつつ、乙矢は、


「新蔵黙れっ! 里跡って言ったよな? お前らこの里を知ってたのか?」

「ええ……美作の山中を移動する時は必ず使う里跡ですから。確か……数年前に飢饉と流行病で無人となった場所だと」


(やられた!)


二人とも同じ心境で、顔を合わせた。


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