弟矢 ―四神剣伝説―
だが……。


「なぜ、貴様がここにおる。何ゆえ、生きておるのだ!」

武藤は驚愕の顔で叫んだ。その目つきは、まるで鬼か幽霊でも見たかのようだ。

それもそのはず、この乙矢は新蔵が……或いは、狩野と精鋭部隊により、すでに始末されている予定だ。それがどうして戻ってきたのか。

しかも、今の乙矢は武藤の顔を見るだけで、怯えて震えていた少年ではない。

己の意思を持つひとりの男として、そこに立っている。


「なぜだっ! なぜ、何一つ思い通りにならぬ!」


武藤はそう叫ぶと、おきみに向かって走った――。


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