弟矢 ―四神剣伝説―
「そうか……生きているのだな、乙矢は」
「精鋭部隊は全滅。『青龍二の剣』は谷底へ。爾志乙矢と桐原新蔵は例の里に駆け戻りました。……閣下、これは作戦失敗でございますかな?」
美作の関から北西に向かった辺り、吉備の山中で交わす、爾志一矢と狩野天上の会話でだった。
狩野はどうしても納得ができず、一矢の手によって、里跡に張られた結界の周囲を探っていた。
突破口となったのは、乙矢が里跡を出た直後、一対の『青龍』を手に結界の外に現れた一矢を目撃した時である。
狩野は元々幕府に仕える隠密だ。武藤のように力技で勝負に持ち込むより、諜報活動のほうを得手としている。だからと言って、決して腕前が武藤に劣ると言うわけではない。その、冷酷無比な殺人者の顔は、蚩尤軍で最も恐れられてると言っても過言ではない。
仮面の男が『朱雀』を手に入れた経緯を辿ろうとして、果たせなかった。
再び城に戻った時、その『朱雀』が消えていることに気付く。結界の奥に納められた『白虎』の存在までは確認できなかったが……。
『狩野。そこにいるのはわかっている。出て参れ』
一矢は、気配を断った狩野を簡単に見破る。
『爾志一矢……いや、閣下とお呼びした方がよろしいでしょうか?』
「精鋭部隊は全滅。『青龍二の剣』は谷底へ。爾志乙矢と桐原新蔵は例の里に駆け戻りました。……閣下、これは作戦失敗でございますかな?」
美作の関から北西に向かった辺り、吉備の山中で交わす、爾志一矢と狩野天上の会話でだった。
狩野はどうしても納得ができず、一矢の手によって、里跡に張られた結界の周囲を探っていた。
突破口となったのは、乙矢が里跡を出た直後、一対の『青龍』を手に結界の外に現れた一矢を目撃した時である。
狩野は元々幕府に仕える隠密だ。武藤のように力技で勝負に持ち込むより、諜報活動のほうを得手としている。だからと言って、決して腕前が武藤に劣ると言うわけではない。その、冷酷無比な殺人者の顔は、蚩尤軍で最も恐れられてると言っても過言ではない。
仮面の男が『朱雀』を手に入れた経緯を辿ろうとして、果たせなかった。
再び城に戻った時、その『朱雀』が消えていることに気付く。結界の奥に納められた『白虎』の存在までは確認できなかったが……。
『狩野。そこにいるのはわかっている。出て参れ』
一矢は、気配を断った狩野を簡単に見破る。
『爾志一矢……いや、閣下とお呼びした方がよろしいでしょうか?』