弟矢 ―四神剣伝説―
だからこそ、一矢の動向が気になり、姿を見失った方角に探しに来たのだ。
だが、あれは蚩尤軍兵士に間違いない。高円の里で見かけた気がする。今見たことが何を意味するのか……。
駆ける弥太吉の前に、ザッと黒い影が立ち塞がった。
「どうしたのだ、弥太吉? お前は私を信じるのではなかったのか?」
一歩……二歩、後退する。だが、弥太吉は不意に肩を掴まれ、木に押し付けられた。背中に食い込む木肌が痛い。
「か、ずや……さま。今の、蚩尤軍の」
「いかにも。だが、心配は要らぬ。奴は我が間者だ。敵を知るために私が放った者」
「か、間者? でも、乙矢が神剣を抜くとか抜かないとか」
「そうだ。乙矢は神剣を手に里を襲った……」
弥太吉は目を見開いた。それが事実なら一刻も早く里に戻らねばならない。
「大変だ……早く弓月さまに報告して、でなきゃ、織田さんや新蔵さんが」
グッと一矢の双眸が弥太吉のそれに近いた。
だが、あれは蚩尤軍兵士に間違いない。高円の里で見かけた気がする。今見たことが何を意味するのか……。
駆ける弥太吉の前に、ザッと黒い影が立ち塞がった。
「どうしたのだ、弥太吉? お前は私を信じるのではなかったのか?」
一歩……二歩、後退する。だが、弥太吉は不意に肩を掴まれ、木に押し付けられた。背中に食い込む木肌が痛い。
「か、ずや……さま。今の、蚩尤軍の」
「いかにも。だが、心配は要らぬ。奴は我が間者だ。敵を知るために私が放った者」
「か、間者? でも、乙矢が神剣を抜くとか抜かないとか」
「そうだ。乙矢は神剣を手に里を襲った……」
弥太吉は目を見開いた。それが事実なら一刻も早く里に戻らねばならない。
「大変だ……早く弓月さまに報告して、でなきゃ、織田さんや新蔵さんが」
グッと一矢の双眸が弥太吉のそれに近いた。