弟矢 ―四神剣伝説―
「人のことが言えるか。俺が負わせた肩の傷は、まだ癒えちゃいないだろう」
「か、かすり傷だ!」
言われて思い出し、傷が疼き始める。
「それに……人を殺せぬお前に、鬼は倒せん。いや、ここに姫様がいたら別かも知れんが」
痛い所を突かれ、グッと黙り込んだ。乙矢の肩を掴み、正三は前に出る。
「お前はおきみを守れ。――里人にも」
不意に、正三の言葉が止まった。乙矢の拳が鳩尾(みぞおち)に食い込んだせいだ。
「こうでもしなきゃ止めらんねぇだろ? おきみ、正三を頼んだぞ!」
「おとやっ!」
膝を突く正三を残し、乙矢は新蔵の後を追うのだった。
「あの……馬鹿。怪我人だぞ、少しは手加減して行け」
「……しょうざ?」
ゆっくり立ち上がりながら、痛そうに顔を歪めている。そんな正三の様子がおきみは酷く心配そうだ。
「ああ、大丈夫だ」
(――できればこの眼で、勇者の誕生を見たいものだな)
乙矢の背中を眺めつつ、正三は心から願っていた。
「か、かすり傷だ!」
言われて思い出し、傷が疼き始める。
「それに……人を殺せぬお前に、鬼は倒せん。いや、ここに姫様がいたら別かも知れんが」
痛い所を突かれ、グッと黙り込んだ。乙矢の肩を掴み、正三は前に出る。
「お前はおきみを守れ。――里人にも」
不意に、正三の言葉が止まった。乙矢の拳が鳩尾(みぞおち)に食い込んだせいだ。
「こうでもしなきゃ止めらんねぇだろ? おきみ、正三を頼んだぞ!」
「おとやっ!」
膝を突く正三を残し、乙矢は新蔵の後を追うのだった。
「あの……馬鹿。怪我人だぞ、少しは手加減して行け」
「……しょうざ?」
ゆっくり立ち上がりながら、痛そうに顔を歪めている。そんな正三の様子がおきみは酷く心配そうだ。
「ああ、大丈夫だ」
(――できればこの眼で、勇者の誕生を見たいものだな)
乙矢の背中を眺めつつ、正三は心から願っていた。