弟矢 ―四神剣伝説―
白鷺の飛び立つ姿に似ているという。美しい鳥の名がついた城に、一騎の兵が駆け込んだ。
「狩野様にご報告申し上げます。遊馬の残党が、乙矢と接触した模様。第三・四・五・六分隊にて山に追い込み、首謀者を取り押さえたる作戦につき、至急応援を、とのことにございます!」
それは、西国の蚩尤軍をまとめる武藤小五郎(むとうこごろう)よりの使者であった。
「そうか。では、乙矢はすでに確保してあるのだな」
狩野天上(かのうてんじょう)は確認のつもりで兵に質問する。
その、生気のまるでない白い顔から表情は全く読めない。女が紅を差したような赤い口元は、異様な光を放っている。『狩野様は人を喰って生きている本物の鬼だ』そんな噂が真実に思えるほどだ。
「あ、あの、それが……」
「どうした」
「武藤様が精鋭部隊を送られたのですが、とり逃がしてしまいまして……」
狩野の眉がヒクッと動いた。兵は慌てて付け加える。
「これまでも何度か見失いましたが、すぐに見つかりました。ご心配には及びません。四天王家の一角とはいえ、あんな愚図、明日にもこの場に連れ、連れ、つれ、れ」
狩野の右腕が微かに動いた。
次の瞬間、兵の首は彼の刀の上にあった。首と胴が離れたことにすら気付かず、兵はしゃべり続けようとするが……やがて、ゴトンと床に落ちる。
「狩野様にご報告申し上げます。遊馬の残党が、乙矢と接触した模様。第三・四・五・六分隊にて山に追い込み、首謀者を取り押さえたる作戦につき、至急応援を、とのことにございます!」
それは、西国の蚩尤軍をまとめる武藤小五郎(むとうこごろう)よりの使者であった。
「そうか。では、乙矢はすでに確保してあるのだな」
狩野天上(かのうてんじょう)は確認のつもりで兵に質問する。
その、生気のまるでない白い顔から表情は全く読めない。女が紅を差したような赤い口元は、異様な光を放っている。『狩野様は人を喰って生きている本物の鬼だ』そんな噂が真実に思えるほどだ。
「あ、あの、それが……」
「どうした」
「武藤様が精鋭部隊を送られたのですが、とり逃がしてしまいまして……」
狩野の眉がヒクッと動いた。兵は慌てて付け加える。
「これまでも何度か見失いましたが、すぐに見つかりました。ご心配には及びません。四天王家の一角とはいえ、あんな愚図、明日にもこの場に連れ、連れ、つれ、れ」
狩野の右腕が微かに動いた。
次の瞬間、兵の首は彼の刀の上にあった。首と胴が離れたことにすら気付かず、兵はしゃべり続けようとするが……やがて、ゴトンと床に落ちる。