弟矢 ―四神剣伝説―
正三は視線を乙矢に固定したまま、恐ろしい予測を淡々と口にする。おまけに、「恐怖だ」と言いつつ、新蔵の目に、正三は笑みを浮かべているように見えた。
怖いものなど何もない、勇猛果敢が取り得の新蔵であったが、この時ばかりは膝が震え、足元から恐怖が込み上げる。
「さすが四天王家筆頭だな」
新蔵の混乱を打ち消すように、ホッとした正三の声が耳に届いた。顔を上げると乙矢が武藤の後ろを取り、神剣を持つ手首を押さえ首を締め上げているところだった。
「ど、どうやって、あの鬼の背後に回ったんだ」
新蔵は驚きを隠せない。それほどの隙があったとは到底思えなかった。
「我ら剣士には考えられぬことをやってくれる。敵将の股ぐらを潜るとは……」
「そっ、そんな真似をしたのか!? 奴には爾志の剣士たる面目はないのかっ」
「そうだな……だが、それよりもっと大事なものを奴は持っている」
新蔵にも正三の言わんとすることはわかった。――認めるしかない。彼は頭を振ると正三の後を追い、乙矢に向かって一歩踏み出した。
怖いものなど何もない、勇猛果敢が取り得の新蔵であったが、この時ばかりは膝が震え、足元から恐怖が込み上げる。
「さすが四天王家筆頭だな」
新蔵の混乱を打ち消すように、ホッとした正三の声が耳に届いた。顔を上げると乙矢が武藤の後ろを取り、神剣を持つ手首を押さえ首を締め上げているところだった。
「ど、どうやって、あの鬼の背後に回ったんだ」
新蔵は驚きを隠せない。それほどの隙があったとは到底思えなかった。
「我ら剣士には考えられぬことをやってくれる。敵将の股ぐらを潜るとは……」
「そっ、そんな真似をしたのか!? 奴には爾志の剣士たる面目はないのかっ」
「そうだな……だが、それよりもっと大事なものを奴は持っている」
新蔵にも正三の言わんとすることはわかった。――認めるしかない。彼は頭を振ると正三の後を追い、乙矢に向かって一歩踏み出した。