弟矢 ―四神剣伝説―
ハッとして振り向いた彼の目に映ったのは、砕けた右手に『青龍一の剣』を握り、自分に向かって振り下ろす武藤小五郎の姿。


飛んでくる矢を受け止めるだけの技量があれば、寸前で刃を取るだけの力はあるはずだ。

しかし、度重なる戦闘で、左肩の傷は開きかけていた。おまけに、一旦、緊張の糸が切れた体は、腕を上げようとするだけで激痛が走る。


(避けられない!)


そう思った瞬間、視界から武藤の姿が消えた。

壁ができたのだ。


――ズサッ!


切っ先が肉に食い込む音が聞こえ、乙矢の体に血の雨が降り注ぐ。壁から突き出た剣先は青銅色に光り、乙矢の鼻先で止まった!


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