弟矢 ―四神剣伝説―
――斬れ。敵を殺せ。最強の力を与えよう。お前は勇者だ。
「黙れ青龍! 最強なんぞ要らん――引っ込んでろ!」
乙矢の心に『青龍の鬼』が語りかける。だが、それはどんどん小さくなり、やがて聞こえなくなった。
ただ――無心――だ。
心の中が、蒼海とも蒼空とも言える、一点の曇りもない清みきった青で満たされていた。
それは、手にした『青龍一の剣』から身体の隅々まで流れ込む。乙矢の中から、怒りも悲しみも、そして迷いも押し流した。
鬼の恐怖に駆られ、数人の蚩尤軍兵士が斬りかかる。乙矢は彼らの刀を持つ腕だけを一刀両断にしていった。
「片腕がなくとも生きていける。腕を失いたくなければ掛かってくるな! 残った腕で、更に人を殺そうとするなら――次は首を斬る!」
乙矢の言葉に彼らは震え上がった。
その時、里から転げるように出てきた人影が、同胞に向かって決死の声を上げる。あの少年兵だ。兄は武藤に殺されたが、弟は生き残った。
「この人たちは敵じゃない! 幕府を謀り、俺たちを戦に巻き込んだのは……こいつらだっ!」
少年の指は明らかに狩野を示していた。
「黙れ青龍! 最強なんぞ要らん――引っ込んでろ!」
乙矢の心に『青龍の鬼』が語りかける。だが、それはどんどん小さくなり、やがて聞こえなくなった。
ただ――無心――だ。
心の中が、蒼海とも蒼空とも言える、一点の曇りもない清みきった青で満たされていた。
それは、手にした『青龍一の剣』から身体の隅々まで流れ込む。乙矢の中から、怒りも悲しみも、そして迷いも押し流した。
鬼の恐怖に駆られ、数人の蚩尤軍兵士が斬りかかる。乙矢は彼らの刀を持つ腕だけを一刀両断にしていった。
「片腕がなくとも生きていける。腕を失いたくなければ掛かってくるな! 残った腕で、更に人を殺そうとするなら――次は首を斬る!」
乙矢の言葉に彼らは震え上がった。
その時、里から転げるように出てきた人影が、同胞に向かって決死の声を上げる。あの少年兵だ。兄は武藤に殺されたが、弟は生き残った。
「この人たちは敵じゃない! 幕府を謀り、俺たちを戦に巻き込んだのは……こいつらだっ!」
少年の指は明らかに狩野を示していた。