弟矢 ―四神剣伝説―
まるで、炎に水を掛けたかのようだ。見る見るうちに乙矢の気は静まり『青龍一の剣』も普通の剣と寸分違わぬ様相を呈する。
だが、『鬼』の気配がまるでない神剣を目の当たりにしたのは初めてだ。新蔵はどうにも気分が落ち着かない。
「大丈夫か――乙矢? お前、乙矢だよ、な?」
「あ……ああ。大丈夫だ。――誰か殺してやりたいと思ったら、すぐに鬼が出てくる。猶予もなきゃ躊躇もさせない。殺れって命じるんだ。厄介な剣だぜ、ホント……手に負えねえじゃじゃ馬みたいだ」
「良かった。今のお前に斬りかかられたら……俺じゃ敵わんからな」
「えらく気弱に……おい! しっかりしろっ!」
狩野から受けた背中の傷が、予想以上に深かったらしい。新蔵の顔から血の気が失せ、真っ青だった。
そして、乙矢の無事を知った途端、膝をついてしまう。無理もない、ここ数日、ろくに眠りもせず、食事も取っていない。おまけに……。
「なあ……織田さんの傍に行きたい。肩、貸してくれるか?」
新蔵は小さな声でボソッと呟く。
「……ああ」
乙矢も短く答えただけだった。
だが、『鬼』の気配がまるでない神剣を目の当たりにしたのは初めてだ。新蔵はどうにも気分が落ち着かない。
「大丈夫か――乙矢? お前、乙矢だよ、な?」
「あ……ああ。大丈夫だ。――誰か殺してやりたいと思ったら、すぐに鬼が出てくる。猶予もなきゃ躊躇もさせない。殺れって命じるんだ。厄介な剣だぜ、ホント……手に負えねえじゃじゃ馬みたいだ」
「良かった。今のお前に斬りかかられたら……俺じゃ敵わんからな」
「えらく気弱に……おい! しっかりしろっ!」
狩野から受けた背中の傷が、予想以上に深かったらしい。新蔵の顔から血の気が失せ、真っ青だった。
そして、乙矢の無事を知った途端、膝をついてしまう。無理もない、ここ数日、ろくに眠りもせず、食事も取っていない。おまけに……。
「なあ……織田さんの傍に行きたい。肩、貸してくれるか?」
新蔵は小さな声でボソッと呟く。
「……ああ」
乙矢も短く答えただけだった。