弟矢 ―四神剣伝説―
すると、なんと裾を引くような、紅裏白綸子(もみうらしろりんず)の打ち掛けを着ているではないか。

慌てて、義姉の持つ手鏡に我が身を映せば……そこには白練(しろねり)の綿帽子を被った弓月がいた。


これは、結納ではない。まさしく婚礼衣装だ。


『さあ、弓月どの、お婿さまがお待ちですよ』


これ以上なく幸福そうに微笑む義姉上に、何かの間違いだ、とは言えず……。


弓月は長い廊下を歩かされた。

はたして、屋敷内にこれほど長い廊下があっただろうか?

東国に領地はあるものの、所詮旗本。大名のように城住まいと言うわけではない。無論、家格は神剣を守護する四天王家として別格の扱いではあったが、生活は質素を旨としていた。


(一体、どうなってるのだろう?)


弓月に胸に疑問が渦巻いた時、目の前に現れた大きな襖が左右に開く。

その正面に、正装の裃(かみしも)を着た若侍が立っていた。花婿に違いない。弓月は、その男を一矢だと思い、なぜ祝言になったのか聞こうとした。

だが、振り返った姿は――


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