弟矢 ―四神剣伝説―
その瞬間、弓月の中に一つの言葉が浮かんだ。今の凪と全く同じ言葉を聞いた。
『奴は、姫様のためなら勇者になり、あなたを失えば、鬼になるでしょう。どうか、何があっても奴を信じてやって下さい』
里を出る直前、正三が耳元で言った言葉。
乙矢こそ勇者である――凪は断言した。
その言葉を驚愕の思いでそれを聞いていたのは、弓月だけではない。長瀬も驚きのあまり固まっている。
「彼は臥龍(がりゅう)です。あなたに出逢い、目醒めつつある」
「それは……」
弓月が口を開きかけた時、凪はスッと手を前に翳した。
直後、弓月も廊下の向こうに人の気配を感じる。障子に映った影、それは一矢だった。
「話は聞かれたようだな。ならば早い、我らも早急に皆実宗次朗殿と合流せねばならぬ。三家で手を取り戦えば、より早く戦いは終結する。そうであろう、凪殿」
今の宗主は凪だ。弓月も凪の決断に従うよりほかないが……。
「我ら遊馬一門は、織田正三郎並びに桐原新蔵の生死を確認すべく、引き返します。どうぞ、一矢殿おひとりで、皆実家にお向かい下さい」
『奴は、姫様のためなら勇者になり、あなたを失えば、鬼になるでしょう。どうか、何があっても奴を信じてやって下さい』
里を出る直前、正三が耳元で言った言葉。
乙矢こそ勇者である――凪は断言した。
その言葉を驚愕の思いでそれを聞いていたのは、弓月だけではない。長瀬も驚きのあまり固まっている。
「彼は臥龍(がりゅう)です。あなたに出逢い、目醒めつつある」
「それは……」
弓月が口を開きかけた時、凪はスッと手を前に翳した。
直後、弓月も廊下の向こうに人の気配を感じる。障子に映った影、それは一矢だった。
「話は聞かれたようだな。ならば早い、我らも早急に皆実宗次朗殿と合流せねばならぬ。三家で手を取り戦えば、より早く戦いは終結する。そうであろう、凪殿」
今の宗主は凪だ。弓月も凪の決断に従うよりほかないが……。
「我ら遊馬一門は、織田正三郎並びに桐原新蔵の生死を確認すべく、引き返します。どうぞ、一矢殿おひとりで、皆実家にお向かい下さい」