弟矢 ―四神剣伝説―
「狩野……天上?」
弓月が小さな声で呟く。
高円の里に里人を助けに乗り込んだ時、一矢を名乗った乙矢と弓月の後方から、突如姿を見せた男。
だが、その時とはだいぶ様相が変わっている。
あの時は余裕の薄ら笑いを浮かべていた。その地位も実力も、武藤より上に見て取れた。
それが今は……。
赤く見える口元は血の汚れで、唇は紫に変色している。血は顎を通り、首筋を伝って衿元を真っ赤に染めていた。かつて、乙矢が気味悪がった爬虫類を思わせる双眸には、なんの色も映ってはおらず、まるで死人のようだ。
そして何より、狩野の右腕は肘から下がなかった。
布の切れ端を大雑把に巻いただけなのだろう、それは止血の役目を果たしてはいない。切断された部分は真っ赤に染まり、地面に血が滴り落ちている。どうやら、口元や衣類に付いた血痕は、そのほとんどが右腕の傷から流れ出たものらしい。
「ふふふ、見つけたぞ。……遊馬弓月!」
「それは……どういう意味だ?」
弓月は、声を詰まらせながらも返答した。
だが、この場で最も驚いていたのは弥太吉だった。
弓月が小さな声で呟く。
高円の里に里人を助けに乗り込んだ時、一矢を名乗った乙矢と弓月の後方から、突如姿を見せた男。
だが、その時とはだいぶ様相が変わっている。
あの時は余裕の薄ら笑いを浮かべていた。その地位も実力も、武藤より上に見て取れた。
それが今は……。
赤く見える口元は血の汚れで、唇は紫に変色している。血は顎を通り、首筋を伝って衿元を真っ赤に染めていた。かつて、乙矢が気味悪がった爬虫類を思わせる双眸には、なんの色も映ってはおらず、まるで死人のようだ。
そして何より、狩野の右腕は肘から下がなかった。
布の切れ端を大雑把に巻いただけなのだろう、それは止血の役目を果たしてはいない。切断された部分は真っ赤に染まり、地面に血が滴り落ちている。どうやら、口元や衣類に付いた血痕は、そのほとんどが右腕の傷から流れ出たものらしい。
「ふふふ、見つけたぞ。……遊馬弓月!」
「それは……どういう意味だ?」
弓月は、声を詰まらせながらも返答した。
だが、この場で最も驚いていたのは弥太吉だった。