弟矢 ―四神剣伝説―
『一矢は一番でなきゃ駄目なんだ』
乙矢はそう言った。
最初からずっと、一矢が助けてくれる。一矢なら、きっとなんとかしてくれる。
もちろん、弓月もそう思っていた。勇者だ、と信じたからこそ、はるばる西国までやって来たのだ。
だが一矢と再会し、弓月の中に期待ではなく疑問ばかりが膨らんだ。
一矢の乙矢に対する態度は、常軌を逸している。それに気付かないのは、乙矢本人だけだ。乙矢の優しさに付け込み、足蹴にしていると言っても過言ではない。一矢は長い年月をかけて、弟の心を蝕み、兄を絶対だと信じ込ませた。
きっかけが何であったのか……。
乙矢が以前、一度だけ兄に勝ったことがある、と言っていた。その敗北が、一矢を勇者の肩書きに執着させたのかも知れない。
だが、何かが一矢を、勇者のフリが通用しない事態に追い込んだ。彼は鉄の仮面を被り、幕府に取り入って蚩尤軍を結成した。
だが、最初に乙矢を殺さなかった訳は……。
「貴様は『青龍』一本であるなら自在に扱えるのだろう。だが、一対を抜くことはできぬ。その腰に下げた『朱雀』も、爾志家の『白虎』も、貴様には抜けぬ。そして恐れたのであろう? 双子の弟が真の勇者であることを」
弓月は声にする度に、確信に近づいて行くのを感じていた。
「勇者? 本当に信じているのか? 勇者が存在すると」
乙矢はそう言った。
最初からずっと、一矢が助けてくれる。一矢なら、きっとなんとかしてくれる。
もちろん、弓月もそう思っていた。勇者だ、と信じたからこそ、はるばる西国までやって来たのだ。
だが一矢と再会し、弓月の中に期待ではなく疑問ばかりが膨らんだ。
一矢の乙矢に対する態度は、常軌を逸している。それに気付かないのは、乙矢本人だけだ。乙矢の優しさに付け込み、足蹴にしていると言っても過言ではない。一矢は長い年月をかけて、弟の心を蝕み、兄を絶対だと信じ込ませた。
きっかけが何であったのか……。
乙矢が以前、一度だけ兄に勝ったことがある、と言っていた。その敗北が、一矢を勇者の肩書きに執着させたのかも知れない。
だが、何かが一矢を、勇者のフリが通用しない事態に追い込んだ。彼は鉄の仮面を被り、幕府に取り入って蚩尤軍を結成した。
だが、最初に乙矢を殺さなかった訳は……。
「貴様は『青龍』一本であるなら自在に扱えるのだろう。だが、一対を抜くことはできぬ。その腰に下げた『朱雀』も、爾志家の『白虎』も、貴様には抜けぬ。そして恐れたのであろう? 双子の弟が真の勇者であることを」
弓月は声にする度に、確信に近づいて行くのを感じていた。
「勇者? 本当に信じているのか? 勇者が存在すると」