弟矢 ―四神剣伝説―
「……先生……凪先生。ご無事でござるかっ!? お返事下されっ!」
長瀬の声にはただならぬ決意が籠もっていた。
ハッとすると、足元にぬるいものを感じる。おそらくは血溜りであろう。思ったより深手のようだ。ほんのわずかだが、意識が落ちていたらしい。凪は軽く頭を振り、答えた。
「大丈夫……です。長瀬どの……先駆けの兵に見つかる前に、二人を連れて逃げて下さい。ここは私が食い止めます」
その瞬間――屍と化した狩野が、そよ風の如く揺らめいた。
流れるような動作で、『白虎』を凪の頭上に振り下ろす。
この時、凪の取った手段は、乙矢が正三相手にしたことと同じだった。その体で、神剣を受け止めようとしたのだ。
だが、殺気なく襲い掛かる狩野を、長瀬が体当たりで止めた。
「凪先生……無茶をされるな。まだ……まだでござる。乙矢殿がおるのだ! 奴が勇者であるなら、必ず来る!」
長瀬は自分右腕が、二度と剛剣を揮うことは叶わぬと覚悟した。
だが、腕や命を惜しむような男ではない。長瀬にとってただ一つの心残り、使命を果たせず死ぬことだけは、武門の名折れだ。
半信半疑ではあっても、残された道は乙矢のみ。
長瀬の声にはただならぬ決意が籠もっていた。
ハッとすると、足元にぬるいものを感じる。おそらくは血溜りであろう。思ったより深手のようだ。ほんのわずかだが、意識が落ちていたらしい。凪は軽く頭を振り、答えた。
「大丈夫……です。長瀬どの……先駆けの兵に見つかる前に、二人を連れて逃げて下さい。ここは私が食い止めます」
その瞬間――屍と化した狩野が、そよ風の如く揺らめいた。
流れるような動作で、『白虎』を凪の頭上に振り下ろす。
この時、凪の取った手段は、乙矢が正三相手にしたことと同じだった。その体で、神剣を受け止めようとしたのだ。
だが、殺気なく襲い掛かる狩野を、長瀬が体当たりで止めた。
「凪先生……無茶をされるな。まだ……まだでござる。乙矢殿がおるのだ! 奴が勇者であるなら、必ず来る!」
長瀬は自分右腕が、二度と剛剣を揮うことは叶わぬと覚悟した。
だが、腕や命を惜しむような男ではない。長瀬にとってただ一つの心残り、使命を果たせず死ぬことだけは、武門の名折れだ。
半信半疑ではあっても、残された道は乙矢のみ。