弟矢 ―四神剣伝説―
睨み合った鬼の存在すら忘れ、夢にまで見た再会に、弓月の声は弾んだ。
「弓月殿――前だ!」
乙矢は、手にした弓を狩野に投げつけた。弓月を抱きかかえ、横っ飛びに地面を転がる。
一方、馬は一矢の手前で急停止した。
弥太吉を巻き込むように立ち塞がり、両者の間を引き離す。そして、馬上から全員を見下ろしたのは、桐原新蔵だった。
その新蔵が早々に叫ぶ。
「乙矢っ! 左だ!」
乙矢たちが転がる先に、唯一残った蚩尤軍兵士が刀を抜き、二人を待ち構えていた。
瞬刻――乙矢は弓月を離すなり敵の懐に潜り込む。兵士の刀を持つ手を押さえ、その肘を反対に捻り上げた。兵士の体は宙に浮き、一回転して背中から叩き付けられ――同時に、骨の砕ける音が山あいに広がる。
乙矢が立ち上がった時、その足元には丸太のように転がる兵士が一人。それは、瞬く間の出来事だった。
弓月は思いもよらぬ乙矢の戦いぶりに声も出ない。
「弓月殿――前だ!」
乙矢は、手にした弓を狩野に投げつけた。弓月を抱きかかえ、横っ飛びに地面を転がる。
一方、馬は一矢の手前で急停止した。
弥太吉を巻き込むように立ち塞がり、両者の間を引き離す。そして、馬上から全員を見下ろしたのは、桐原新蔵だった。
その新蔵が早々に叫ぶ。
「乙矢っ! 左だ!」
乙矢たちが転がる先に、唯一残った蚩尤軍兵士が刀を抜き、二人を待ち構えていた。
瞬刻――乙矢は弓月を離すなり敵の懐に潜り込む。兵士の刀を持つ手を押さえ、その肘を反対に捻り上げた。兵士の体は宙に浮き、一回転して背中から叩き付けられ――同時に、骨の砕ける音が山あいに広がる。
乙矢が立ち上がった時、その足元には丸太のように転がる兵士が一人。それは、瞬く間の出来事だった。
弓月は思いもよらぬ乙矢の戦いぶりに声も出ない。