弟矢 ―四神剣伝説―
先に歩く一矢が、神殿の扉に手を触れた瞬間……それは、乙矢の頭に飛び込んできた。
――震え上がるほどの恫喝。
しかし、それを凌駕するほどの誘惑。様々な声が乙矢の体内を駆け巡る。
「怖いよぉ、かずやぁ、もう嫌だよぅ」
一矢は半泣きの乙矢の手を振り払い、ひとり、神殿の奥に進んだ。
“そこ”に、近づくごとに、一矢を取り巻く気配が変わっていく。
そして……封印され、白木の台に奉納された神剣『白虎(びゃっこ)』を目にするなり駆け寄った。
「僕が……勇者だ」
そう呟くと、彼は『白虎』を鷲づかみにする!
鈍く、白濁の光が一矢を包み込む。
乙矢は瞬間的に、兄が遠くへ行ってしまうことを悟った。
「かずやぁ……かずやぁっ!」
失いたくない! その思いは頭に響く声より強く、彼の恐怖を一掃した。一矢を突き飛ばし、『白虎』を取り上げ、元の位置に戻そうと濁った光の中に飛び込んだ。
刹那――神殿の中は真っ白い光で満たされた。
乙矢は、頭が締め付けられる強烈な痛みに眩暈を覚え、膝を突く。そして、二人はそのまま意識を失い……。
――震え上がるほどの恫喝。
しかし、それを凌駕するほどの誘惑。様々な声が乙矢の体内を駆け巡る。
「怖いよぉ、かずやぁ、もう嫌だよぅ」
一矢は半泣きの乙矢の手を振り払い、ひとり、神殿の奥に進んだ。
“そこ”に、近づくごとに、一矢を取り巻く気配が変わっていく。
そして……封印され、白木の台に奉納された神剣『白虎(びゃっこ)』を目にするなり駆け寄った。
「僕が……勇者だ」
そう呟くと、彼は『白虎』を鷲づかみにする!
鈍く、白濁の光が一矢を包み込む。
乙矢は瞬間的に、兄が遠くへ行ってしまうことを悟った。
「かずやぁ……かずやぁっ!」
失いたくない! その思いは頭に響く声より強く、彼の恐怖を一掃した。一矢を突き飛ばし、『白虎』を取り上げ、元の位置に戻そうと濁った光の中に飛び込んだ。
刹那――神殿の中は真っ白い光で満たされた。
乙矢は、頭が締め付けられる強烈な痛みに眩暈を覚え、膝を突く。そして、二人はそのまま意識を失い……。