弟矢 ―四神剣伝説―
「弓月どの、早く新蔵を。奴から、『朱雀』を取り上げて下さい」
凪の言葉に、弓月は急いで新蔵の元に駆け寄った。
『朱雀』からは異様な妖気が漂ってくる。できれば、弓月自身も触れたくはない。だが、佇む新蔵の様子から、そうも言ってはおられなかった。
「新蔵……新蔵、それを『朱雀』を放すのです。さあ、こちらに渡しなさい」
中空を睨み、視点が定まらなくなる新蔵を見て、弓月は遠慮なくその頬を叩いた。周囲には小気味好い音が響く。
「弓月様……。あ、乙矢は」
新蔵の瞳が弓月を見た瞬間、その手から『朱雀』を取り上げた。
「乙矢なら、今のところ無事だ。こたびの一件、奴がつけねばならぬ決着であろうからな」
新蔵の問いに弓月ではなく、長瀬が答える。
弥太吉と長瀬に支えられ、凪も近づいてきていた。
弓月は『朱雀』を手に、乙矢たちを食い入るように見つめている。その内なる変化に、この時、誰も気付くことはなかった。
凪の言葉に、弓月は急いで新蔵の元に駆け寄った。
『朱雀』からは異様な妖気が漂ってくる。できれば、弓月自身も触れたくはない。だが、佇む新蔵の様子から、そうも言ってはおられなかった。
「新蔵……新蔵、それを『朱雀』を放すのです。さあ、こちらに渡しなさい」
中空を睨み、視点が定まらなくなる新蔵を見て、弓月は遠慮なくその頬を叩いた。周囲には小気味好い音が響く。
「弓月様……。あ、乙矢は」
新蔵の瞳が弓月を見た瞬間、その手から『朱雀』を取り上げた。
「乙矢なら、今のところ無事だ。こたびの一件、奴がつけねばならぬ決着であろうからな」
新蔵の問いに弓月ではなく、長瀬が答える。
弥太吉と長瀬に支えられ、凪も近づいてきていた。
弓月は『朱雀』を手に、乙矢たちを食い入るように見つめている。その内なる変化に、この時、誰も気付くことはなかった。