弟矢 ―四神剣伝説―
三、『朱雀』の鬼
「姫っ……駄目です、お止め下され!」
「姫さまぁっ!」
長瀬らの叫び声が聞こえた直後――『青龍一の剣』の剣速がわずかに鈍った。それは、ほんの少しであったが、乙矢には充分な形勢逆転の攻め口となる。
一矢のしくじりは、乙矢の手足を自由なままにしたことだろう。
乙矢は、胸に突き立てられる寸前、鹿皮の弓懸を巻いた右手で刃を真横から叩いた。刃先は逸れ、脇を掠めたが致命傷は逃れる。同時に左足を右斜めに振り上げた。一矢の体を巻き込むように横から絡め取り、拘束から逃れる。
「チッ!」
一矢は舌打ちし、素早く体勢を立て直す。乙矢も起き上がった。そして、二人は再び向かい合う。
だが、そんな兄弟の間に飛び込む人影が――それは『朱雀』を手にした弓月だった。
「姫さまぁっ!」
長瀬らの叫び声が聞こえた直後――『青龍一の剣』の剣速がわずかに鈍った。それは、ほんの少しであったが、乙矢には充分な形勢逆転の攻め口となる。
一矢のしくじりは、乙矢の手足を自由なままにしたことだろう。
乙矢は、胸に突き立てられる寸前、鹿皮の弓懸を巻いた右手で刃を真横から叩いた。刃先は逸れ、脇を掠めたが致命傷は逃れる。同時に左足を右斜めに振り上げた。一矢の体を巻き込むように横から絡め取り、拘束から逃れる。
「チッ!」
一矢は舌打ちし、素早く体勢を立て直す。乙矢も起き上がった。そして、二人は再び向かい合う。
だが、そんな兄弟の間に飛び込む人影が――それは『朱雀』を手にした弓月だった。