弟矢 ―四神剣伝説―
乙矢は背後から狙う一矢に、長刀を大振りし後退させた。
だが――間髪入れず、前方から弓月が向かってくる。乙矢は身を屈めると刀を捨て、突如、弓月の懐に飛び込んだ。そのまま彼女に抱き付き、二人は縺れ合う様に地面を転がる。
それでも、弓月は『朱雀』を離そうとはしない。
乙矢は半身を起こした状態で弓月の身体を抱き寄せ……力いっぱい抱き締めた。
「弓月殿は、鬼にはならない。俺がさせない。必ず守るから……俺を信じろ」
憎しみと悲しみに囚われ、奈落の底に堕ち掛けた弓月の魂を、乙矢は渾身の力で引き上げる。
瞬く間に、弓月の双眸から涙がこぼれ落ちた。
だが、その手は『朱雀』を逆手に持ち替え……今にも、血塗られた切っ先が乙矢の脇腹に吸い込まれそうになる。
「……と、やどの……」
「剣を離すんだ。大丈夫、弓月殿ならできる。自らの力で、鬼を振り切れ!」
――ガチャン。
二人の横に『朱雀』が転がった。
震える弓月の指先が、乙矢の背に触れる。同時に、乙矢の手が弓月の髪を撫でた。ほんの一瞬、二人が固い抱擁を交わし……。
しかし、それを邪魔するように、『青龍一の剣』が風を切り裂き、二人に襲い掛かった。
だが――間髪入れず、前方から弓月が向かってくる。乙矢は身を屈めると刀を捨て、突如、弓月の懐に飛び込んだ。そのまま彼女に抱き付き、二人は縺れ合う様に地面を転がる。
それでも、弓月は『朱雀』を離そうとはしない。
乙矢は半身を起こした状態で弓月の身体を抱き寄せ……力いっぱい抱き締めた。
「弓月殿は、鬼にはならない。俺がさせない。必ず守るから……俺を信じろ」
憎しみと悲しみに囚われ、奈落の底に堕ち掛けた弓月の魂を、乙矢は渾身の力で引き上げる。
瞬く間に、弓月の双眸から涙がこぼれ落ちた。
だが、その手は『朱雀』を逆手に持ち替え……今にも、血塗られた切っ先が乙矢の脇腹に吸い込まれそうになる。
「……と、やどの……」
「剣を離すんだ。大丈夫、弓月殿ならできる。自らの力で、鬼を振り切れ!」
――ガチャン。
二人の横に『朱雀』が転がった。
震える弓月の指先が、乙矢の背に触れる。同時に、乙矢の手が弓月の髪を撫でた。ほんの一瞬、二人が固い抱擁を交わし……。
しかし、それを邪魔するように、『青龍一の剣』が風を切り裂き、二人に襲い掛かった。