弟矢 ―四神剣伝説―
「あれは……なんだ。さっきの『青龍』の時とは桁外れではないか? 新蔵、どういうことだ!」


そう叫んだのは長瀬だった。

事態はすでに、人為の及ぶところではない。だが、『青龍』の時は、乙矢の内から溢れ出る何かが『青龍』を神剣の色に変えた。

ところが、今度は違う。

天空から降り注ぐ光は、まるで神剣に特別な力を与えているように見えた。そしてその力は、神剣から乙矢に送り込まれる。


「わ、わかりません。里で『青龍』を手にした時もこんなふうにはならなかった……」


新蔵の頭も混乱をきたしている。これが良い兆候なのか、それとも。


「なるほど……そういうことでしたか」


凪は独り、得心が行ったようにうなずいていた。

そして、さっぱりわからない様子の新蔵たちに話して聞かせる。


「『青龍』は一の剣だけでした。勇者でなくとも、使えることがあるという。内に流れる勇者の血が、神剣に注ぎ込まれ、一時的に制することができるのでしょう。だが、真の勇者は神剣に宿る鬼に選ばれ、力を与えられる。私にはただ――感じ取ることしかできませんが。勇者の力と鬼の力は種類が違う。神の創りし護国の神剣……神剣に宿る鬼とは、およそ神であり、人の心に巣食う魔物でもあるのでしょう」
 

新蔵にも弥太吉にも凪の言葉の半分は理解できない。だが、期待と不安が彼らを包み込んでいた。


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