弟矢 ―四神剣伝説―
「クッ!」
「……相変わらずだな、乙矢。貴様を殺して……私も死ぬ」
一矢の口端から血が一筋流れ落ちた。拭おうともせず、そのまま口元を歪ませ笑う。刀身を引き抜くと、今度は乙矢の腹に突き刺そうとした――だが。
乙矢の右手が閃き……次の瞬間、ボトリと草むらに腕が落ちた。それは、血に塗れた一矢の右腕。乙矢は『白虎』を一閃し、肘から切断した。
「グゥッ!」
一矢は唸り声を上げると、そのまま仰向けに倒れこむ。乙矢を罠に落とすため、自らの腹に突き刺した傷は、決して浅いものではない。神剣を持たぬ以上、動き続けることは不可能に思えた。
「乙矢殿っ! 大丈夫でございますか?」
乙矢の傍に弓月が走り寄り、彼の体を支える。
「ああ、大丈夫だ。俺は、大丈夫だから……」
弓月にそう答えると乙矢は一矢を見下ろした。
「俺たちは二人で生まれてきた。でも、お前は爾志一矢で、俺は爾志乙矢なんだ。別々に生きて、死んで行かなきゃならない。一矢……俺は二度と、何があろうと、誰からも逃げない!」
「お、とや……なら、なぜ止めを刺さん。結局、おまえに……私は……殺せんのだ」
「――かもな」
「後悔……するぞ」
一矢はそう言うと、静かに目を閉じたのだった。
「……相変わらずだな、乙矢。貴様を殺して……私も死ぬ」
一矢の口端から血が一筋流れ落ちた。拭おうともせず、そのまま口元を歪ませ笑う。刀身を引き抜くと、今度は乙矢の腹に突き刺そうとした――だが。
乙矢の右手が閃き……次の瞬間、ボトリと草むらに腕が落ちた。それは、血に塗れた一矢の右腕。乙矢は『白虎』を一閃し、肘から切断した。
「グゥッ!」
一矢は唸り声を上げると、そのまま仰向けに倒れこむ。乙矢を罠に落とすため、自らの腹に突き刺した傷は、決して浅いものではない。神剣を持たぬ以上、動き続けることは不可能に思えた。
「乙矢殿っ! 大丈夫でございますか?」
乙矢の傍に弓月が走り寄り、彼の体を支える。
「ああ、大丈夫だ。俺は、大丈夫だから……」
弓月にそう答えると乙矢は一矢を見下ろした。
「俺たちは二人で生まれてきた。でも、お前は爾志一矢で、俺は爾志乙矢なんだ。別々に生きて、死んで行かなきゃならない。一矢……俺は二度と、何があろうと、誰からも逃げない!」
「お、とや……なら、なぜ止めを刺さん。結局、おまえに……私は……殺せんのだ」
「――かもな」
「後悔……するぞ」
一矢はそう言うと、静かに目を閉じたのだった。