弟矢 ―四神剣伝説―
「遊馬の姫様! 大丈夫でございますか?」
『青龍一の剣』を鞘に納め、呼吸を整えつつある弓月の元に、ひとりの正規軍兵士が駆けつけた。
「私は大丈夫です。その神剣『朱雀』に誰も触れぬように見張っていて下さい。これ以上、無用な犠牲は出したくない。――爾志の乙矢殿を早く此処に!」
後方から駆けつけてくる他の兵士に弓月は声を掛けた。ふたりの兵士は「ハッ」と短く答え、乙矢を呼びに取って返す。
最初にやって来た兵士が、『朱雀の鬼』の成れの果てを見下ろしつつ、弓月に話しかける。
「矢に心の臓を射られ、腹を裂かれても死なぬとは……。これを正気で扱えれば、まさに最強の剣士でございますな」
弓月は、そのいささか無神経な発言に眉を顰める。
「最強を望むものが手にすれば、間違いなく鬼の餌食となろう。それに、浅ましい了見を持ちて神剣に近づけば、触れずとも鬼は其の方を喰らうであろう」
その兵士は一度も弓月のほうを見ようとしない。
『青龍一の剣』を鞘に納め、呼吸を整えつつある弓月の元に、ひとりの正規軍兵士が駆けつけた。
「私は大丈夫です。その神剣『朱雀』に誰も触れぬように見張っていて下さい。これ以上、無用な犠牲は出したくない。――爾志の乙矢殿を早く此処に!」
後方から駆けつけてくる他の兵士に弓月は声を掛けた。ふたりの兵士は「ハッ」と短く答え、乙矢を呼びに取って返す。
最初にやって来た兵士が、『朱雀の鬼』の成れの果てを見下ろしつつ、弓月に話しかける。
「矢に心の臓を射られ、腹を裂かれても死なぬとは……。これを正気で扱えれば、まさに最強の剣士でございますな」
弓月は、そのいささか無神経な発言に眉を顰める。
「最強を望むものが手にすれば、間違いなく鬼の餌食となろう。それに、浅ましい了見を持ちて神剣に近づけば、触れずとも鬼は其の方を喰らうであろう」
その兵士は一度も弓月のほうを見ようとしない。