弟矢 ―四神剣伝説―
「そうであったか……おぬしが皆実の宗次朗殿でござるか」
遅れて追いついた長瀬が呻くように言った。長瀬も湯治場近くの森で宗次朗の顔を見たひとりである。
「長瀬さん! この男をご存知なのですか?」
新蔵の問いに、長瀬は答えた。
「蚩尤軍兵士のなりをして、一矢殿に……正三が死んだと報告しておった男だ。一矢殿は己の間者だと言っていたが、まさか、この男が一矢殿の協力者であったとは。いや、一矢殿は『朱雀』にそそのかされたようだと、凪先生は仰られた。それは――黒幕は宗次朗殿、おぬしでござるか?」
太陽が中天に達しつつあった。
それぞれの額に汗が浮かび、それは頬を伝って顎から滴り落ちる。
『青龍』を振り払った後、『朱雀』は弓月の喉元に狙いを定め、宗次朗はそれを下ろそうとはしない。
全員が押し黙る中、窒息しそうなほどの閉塞感を打破し、口火を切ったのは乙矢だった。
遅れて追いついた長瀬が呻くように言った。長瀬も湯治場近くの森で宗次朗の顔を見たひとりである。
「長瀬さん! この男をご存知なのですか?」
新蔵の問いに、長瀬は答えた。
「蚩尤軍兵士のなりをして、一矢殿に……正三が死んだと報告しておった男だ。一矢殿は己の間者だと言っていたが、まさか、この男が一矢殿の協力者であったとは。いや、一矢殿は『朱雀』にそそのかされたようだと、凪先生は仰られた。それは――黒幕は宗次朗殿、おぬしでござるか?」
太陽が中天に達しつつあった。
それぞれの額に汗が浮かび、それは頬を伝って顎から滴り落ちる。
『青龍』を振り払った後、『朱雀』は弓月の喉元に狙いを定め、宗次朗はそれを下ろそうとはしない。
全員が押し黙る中、窒息しそうなほどの閉塞感を打破し、口火を切ったのは乙矢だった。