弟矢 ―四神剣伝説―
確かに、四天王家に伝わる四神剣の伝説では、皆実家の祖となる初代『朱雀』の勇者は他の三人を裏切ったという。そのため、『白虎』の勇者に討たれた、と。


「その伝説は私も幼き頃から聞いております。ですがそれは、あなたが我らを裏切る理由にはならない。四天王家に生まれた宿命などと申されるな。我らは等しく、勇者の末裔ではございませんか!」


しかし、その弓月の言葉を宗次朗は一笑に付した。


「等しく? 四天王家とは名ばかり……『朱雀』の勇者の血を引く我らは、その裏切りの剣と共に、対馬に閉じ込められたようなもの。本土より他国に近い島から、我らは自在に出ることもできなかった。我ら皆実一門の願いは『朱雀』が主を定め、勇者が誕生すること――そして、『白虎』の勇者を倒し、四神剣の伝説に終止符を打つことのみ」


そんなことは、弓月には聞かされてはいなかった。


皆実家は勇者の末裔であると同時に、鬼に魂を渡した裏切り者の末裔であることは周知の事実。裏切り者の血縁に『朱雀』の守護は任せられぬ、との声もあった。

だがその時、『白虎』を守護する爾志が宣言した。

『朱雀の裏切りは、必ずや白虎が止める』――その結果、爾志の監視下に皆実は置かれたのである。

皆実家は四天王家として、神剣の守護に就くことを強制され、且つ、裏切り者の末裔と呼ばれ続けた。

そんな彼らの願いはいつしか、『白虎』を滅ぼし、勇者の血を根絶やしにして、四種五本の剣を消滅させること、になっていったという。


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